私がこの道に入ることになったのは、1頭のプードルとの出会いでした。
父親を長い闘病の後亡くし、家族の中のポッカリ空いた隙間を
埋めるかのように『エル』は私のもとにやってきました。
エルが仔犬の頃お世話になっていたサロンが移転する事になった時、
歯車が動き出したのです。
当時は車の免許がなく移転先にまでは通えなかったため、渋々近所のサロンに
変わったのですが、これがどうしてもイメージ通りの仕上がりになりません。
その後も、送迎をしてくれるサロンなどあちこち通いましたが、
どこも気に入らず・・・最終的に、単細胞な私はこう考えました。
「どこもかしこもへたくそなんだからっ (-_-メ) もういいやっ!
自分でカットしよう!!」
かくして、昼はOL、夜は夜間のトリミングスクールという生活が始まります。
すると、ここでもまた運命の出会いが・・・
お世話になったスクールが、当時中部で有名なプードルのブリーダーさんが
運営していたトリミングスクールだったんです。
モデル犬はショードッグをリタイヤした子やそれに準ずる子達ばかり。
先生方の手直しもあってそれはそれは素敵に仕上がります。
毎日それほど良質なプードルを触らせて頂いているにも関わらず、
「うちの子が1番」の親バカゆえに目が曇っていた私は、まだ現実に
気が付いていませんでした。
半年ほども経った頃でしょうか、
「練習にもなるから家で犬を飼っている子は連れてきてもいいよ」
と、先生からお許しが出たので、是非とも可愛いエルちゃんをみんなに
見てもらおうと、早速、いそいそと連れて行きました。
開口1番!学園長の一言!
「なんだ、これは!? 純血種か?今時ダックス体型のプードルがいるのか!」
・・・そうだったんです・・・
エルは極端なドワーフタイプ(胴長、短足)だったんです。
このタイプは毛量が多く多産系ということで、昔は繁殖用の台雌として
使われていました。
ショードックを扱っている先生の所のプードルは当然ハイオンタイプ
(体高、体長が等しいスクエア)。
そりゃ元の犬質が良いわけだから1年目の学生でも先生方のご指導で
それなりの仕上がりになる訳で・・・
「親馬鹿」はここでようやく現実に気がつくんですね。
10㎝にも満たない前肢にポンポン作れだの、異常に長い胴にベルト入れろ
だの無茶振りをした挙句「へたくそっ!」と言い捨てていた私・・・
赤面ものです!穴があったら入りたいっ!!
当時お世話になったトリマーさん達ごめんなさいっ!m(__)m
いくら技術があろうともフォローしようもない体型のプードルでした・・・
エルが普通の体型のプードルだったら今の私は存在しません。
カットの仕上がりにそれなりに満足して普通の愛犬家でいたことでしょう。
短足で胴長なエルでいてくれたからトリミングスクールに飛び込みました。
エルのおかげで素晴らしいプードル達に触れることができ、
尊敬できる指導者に巡り会うことができました。
その後、エルの名前をもらった「トリミングスタジオL」をオープン、
ここでは、毎日色々なお客様との触れ合いがあります。
お客様の向こうには、当時の未熟な自分が見える事もあります。
そんな時は一生懸命ご要望をお聞きし、説明をさせて頂き、
なるべくご期待に添えるよう努力します。
だって、誰だって当然「うちの子が1番可愛い♡」のですものね♪